Apr 22, 2010

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 東日本大震災で被災した宮城県石巻市では、生誕40周年の「仮面ライダー」を生んだ同県出身の漫画家、石ノ森章太郎氏(1938〜98年)を記念する「石ノ森萬画館」や、同氏が高校時代に通った映画館などが大きな被害を受けた。日本有数の港町は「漫画文化」を大切にしてきた街でもある。被災から3カ月余り、残された石ノ森氏との“縁”を復興のシンボルとして立ち上がる街の表情を追う。(岡本耕治)

 宮城県の北東部に位置するJR石巻駅。その正面に、約1キロにわたって「マンガロード」が延びている。外壁が落ち、今も柱がゆがんだままになっているマンガロードの商店街に、守護神のように立っているのは、「仮面ライダー」「サイボーグ009」…。石ノ森氏のキャラクターの銅像たちだ。

 ロードを抜け、市中心街と旧北上川の中州「中瀬」とを結ぶ西内海(うつみ)橋に立つと、SF映画の一場面のような光景が目に飛び込んでくる。津波で大半の建築物が流された中瀬に、ぽつんと残された白い球形の建物。キャラクターが一堂に集まる石ノ森萬画館だ。

 同館は、石ノ森氏が残した「中州に降り立ったUFO」のラフスケッチを元に、平成13年に建設された。そのアイデアは、今となっては予言めいたものに思えてくる。

 3月11日、この萬画館を震度6弱の地震が襲った。

 建物は激震に耐えた。20人ほどいた来館者は避難させ、スタッフも1人を残して避難した。しかし、そこに大津波警報。このスタッフは、付近に取り残されていた約20人を館内に誘導、その直後に津波が襲った。濁流は5・5メートルの高さの1階天井近くにまで達した。

 スタッフは津波で流されてきた20人をさらに館内に導いて救出した。軽食コーナーの食料を分け合い、5日間はここが臨時避難所となった。

 「10周年を迎えた年に、こんなことになるなんて」

 市の委託で同館を運営する「街づくりまんぼう」の西條允敏(まさとし)社長(67)。「でも石ノ森先生の原稿9万点などの収蔵品は守れたし、人助けもした。不幸中の幸いかな」と苦笑する。

 だが、1階は土砂とがれきで埋まり、電気設備は壊れ、臨時閉館。再開のめどは立たず、スタッフの大半を解雇した。同館は、国内外から年間18万人が訪れる人気スポットだった。木村仁統括部長(43)は「スタッフが、石ノ森ファンだけに頼らず萬画館のファンも増やしてきたおかげなのに」と嘆く。

 しかし、多くの「元」スタッフが館内の清掃に自主的に参加し、再開を目指して、ボランティアの人々と一緒に復旧作業を続けた。

 「イベントをやろう!」

 1階の床が見えてきた4月中旬、西條社長たちは5月5日のこどもの日に、萬画館周辺でイベントを行うことを決意した。

 「避難所には、家や親を失った子供がいっぱいいる。彼らに娯楽を与えたいと思った」と木村部長。

 2人は各地の避難所や学校でチラシを配った。噂を聞きつけ、さまざまなボランティア団体が参加を表明した。当日は6千人もの人々が集まり、中瀬は久々に活気づいた。

 メーンイベントは、石ノ森氏のスケッチを参考にデザインした石巻市のご当地ヒーロー、「シージェッター海斗(かいと)」ショーだ。

 「子供たちの笑顔が少しずつ“本物”になる。それにつれて親の顔が変わるんです。あの顔を見られてよかったなあ」と西條社長はしみじみと語る。

 市との業務委託契約は今年3月で切れた。市が復興業務に忙殺され、毎年行ってきた更新手続きをする余裕がなかったからだ。木村部長は「厳密には僕らは萬画館に権限がない状態だが、それでも必ず再開できると信じて、復旧作業を進めている」と話す。

 復興のシンボルとなった萬画館。「世界の石ノ森ファンのためにも、一日も早い再開を」と2人は願う。

 ■宮城県石巻市 県内では仙台市に次ぐ人口約16万人の市。石ノ森章太郎氏の協力を得て平成8年、「石巻マンガランド基本構想」を策定。漫画による町おこしに取り組み、「石ノ森萬画館」や「マンガロード」などを市内に展開する。

【プロフィル】石ノ森章太郎 いしのもり・しょうたろう 漫画家。昭和13年、石巻市の隣町、石森(いしのもり)町(現登米(とめ)市)出身。本名、小野寺章太郎。高校時代の29年、「二級天使」でデビュー。卒業後に上京し、手塚治虫らが住んだ「トキワ荘」(東京都豊島区)で活動。46年、原作を手掛けた「仮面ライダー」が放映、シリーズは現在も続いている。代表作に「サイボーグ009」「佐武と市捕物帖」「HOTEL」など。平成10年、リンパ腫のため60歳で死去。

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